台湾3


妻とふたりで迪化街をぶらぶらして、よく分からないレストランで昼飯を食べてから空港に向かう。

ここでここまで一緒に来てくれた彼女は先に帰る。空港で見送ったあと、物凄い寂寞感孤独感が押し寄せてきて喫煙所で思わず涙ぐむ。自分はこれから「自分探しの旅」など嘯いて、台中・台南まで一人で旅行する予定をたててしまっている。本当に自分は馬鹿者だ、なぜ一緒に帰らなかったのかと激しく後悔する。自分はアウトドアタイプではなく、アトリエでひっそり絵を描いたり、素人木工をして悦に入ったり、アゲハチョウや蟻を観察したり、寝転がって腹を出して本を読んだりするのが好きな根っからのインドア派なのに。
画廊へ行くと、あまりの自分の不安な顔、心細そうな態度に同情して、台北→台中、台中→台南までの台鉄自強号(特急列車)の指定席、左営(高雄)→台北の高鉄(新幹線)の指定席をインターネットで予約してくれ、何かあったらここに連絡しなさいと日本語を喋れる彼女の友人の連絡先を教えてもらう。もはや初めてのお使いの小学生のようだが、その親切心によって心が少し晴れてくる。

画廊が終わったあと、オープニングパーティーに来てくれた寶蔵巌国際芸術村(トレジャーヒル)のアーティストレジデンスに参加中の日本人作家の作品を見に行く。自分より10才若い彼は、色々な国のアーティストレジデンスを渡り歩いて生きているそうで、偉いなぁ、立派だなぁ、一人旅に不安がっている自分よりはるかに頼もしい。



込み入った住宅をちょろっと見学して晩ご飯を食べに行く。

これが人と一緒に食べる最後の食事になると思うとまた寂しさがこみ上げてくる。