イメージトレーニング


この時期は手巻きタバコになる。(お金がないので)。一年ぶりに巻いてみると、何故か格段に上手くなっていて、一連の動き、フィルターを口にくわえながら、紙に刻まれた葉をしき、素早くフィルターを挟んだら、返す刀でくるりと巻き、糊部分をペロリと舐めてしめつける、が実にスムーズでいっさいの無駄が無く、自分でいうのも何だけど惚れ惚れする。もう前世はプッシャーかジャンキーかというぐらい。けれども不思議なのは1年前は大変下手くそで、糊を舌で舐める際には葉っぱがくっつく、できたタバコは隙間だらけでまずい、口に葉っぱが入り気色が悪い、ぽろぽろ葉が散らかる、近所のコンビニには売ってないので遠出をして買いにいかなければならないなど、様々な面倒くささが横溢してて次第に遠ざかっていったので、経験を積んで、次第に上達して行ったというのと訳が違うというところ。
かの有名なドラム奏者村上ポンタ秀一は、最初のバンドのオーディションの時、自宅にドラムセットが無いので全て口で言えるように(ヒューマンビートボックスみたいに)練習し、会場で生まれて初めてドラムを叩き、見事合格、なんて本当か嘘か分からない伝説があるけど、いわゆるイメージトレーニング、身体を巧みに操る為には、そのパフォーマンスを完遂した後の自分を具体的に、リアルに先に実感することができれば、それにあわせて肉体も反応していく、あるいはそういう身体組織に編成されていく、なんて人口に膾炙している。
ということは、この一年の間、台所の片隅に放置されたままの残りの葉とフィルターを見る事もなしに眺めながら、意識下では、くるくる巻ける自分というのを立体的にイメージしていて、そしてこのような境地に辿り着いたのだろうか。