アパシー

レイモンド・カーヴァー「ぼくが電話をかけている場所」
何か特別なものを持たない人達の、大きな事件のおきない物語。薄気味悪い狂気がときどき裂け目から顔をのぞかせ、そしてそれはすぐに隠れ(あるいは気付かれず)たんたんとすすむ。
村上春樹の翻訳の力っていうか、何考えてるか分からない内面の伺い知れようがない人物ってのがまたよく出てて、村上小説の登場人物の口癖の「やれやれ」、とか「まいったね」っていいながらそこではないどこか遠くに視点が向いている感じというか、その妙な空気感、アパシー、倦怠感が、終わりなき日常を生きざるを得ない、堪え難い現代人の孤独を濃くしているかんじというか。けっして開けられないけど、内側に大きな深い傷をもっているような。