アリとの日々


毎日、持って行ったお弁当を少しだけあげている。
暖かくなり活性化し、健気に一生懸命運んでいるのを見ていると、よし、明日も弁当を持って来てやるからな、おれもがんばるからな、と殊勝な気持ちになる。
巣穴は日々移動を繰り返し、昨日までの入り口は廃墟になり、近くに新築の入り口が出来ている。その穿鑿の意思決定というか号令のようなもの(テレパシー的な、神の託宣のような)は多分あるんだろうなと思う。なぜなら、巣穴は目の前なのに、まるで方向の違うところへ運んでいくおっちょこちょいや、みんなで力を合わせて運んでいる最中、真逆の方向へ引っ張る輩、あるいは自分が偶然踏み殺してしまったアリはその途端餌として他のアリに巣穴に運ばれているくらい、個々の識別能力、思考力は限りなく0に近いような気がするから。