透過する光


近所の皮膚病院へ行く。年老いた先生は、痒いのはしょうがないんだから、もう一両日の辛抱だからそれまで我慢しなさいとたしなめる。この痛痒は個別的かつ絶対的な感覚で、大人だから男だからとか属性は全く関係なく、まして数日後の近未来も関係ない、たった今、現時間が狂しい。
診察もチラッと見て終わり、いまだ名も知らぬ新種の外来種に刺されたかもしれないのに、40過ぎて体内のホルモンバランスが変調をきたし新たなアレルギーが誘発されたかもしれないのに、痒くて辛くて昨日は眠れなかったのに、このヤブクソジジイ。と心の中で罵倒しながら痒い痒いと半泣きで家に帰る。
処方された痒み止めはドラッグストアで購入したムヒなどよりはるかに効き目は強く、しばらくたってから、まぁそんな悪いジジイ先生でもなかったのかな、とか思う。
老師曰く、普段暮らしている所でブヨに噛まれても耐性ができていて何ともないが、遠方の山川に行って噛まれたりすると大層腫れることがあるそう。
それでも間歇的に痒みは襲ってきて、歯を食いしばり畳に爪を食い込ませて耐える堪える。