隠遁者の塔




その杣道を進んで行くと、何やら怪しげな赤い札が木枝に結ばれているのが増えてくる。文面は長年の風雨に塗れ滲み判読し難いが、注意深く見れば「お前達は業が深く、大変不幸。唯一救われる道はこの先の神殿にお布施をすればよい」。陰鬱な妖気漂う。
急に辺りは開け、建設中というよりは途中で断念されたかのような、未だ鉄骨剥き出しの仏塔が現れる。圧倒的異形。
なにゆえこのような辺鄙な山の中腹に普請しようと思うに至ったのか、そしてこうして放擲されているのか。
ふと気配を感じ、振り返れば、今まで廃屋だと思っていた小屋の前を男が黙って竹箒で掃いている。
去れ!と。