すきなモノ


オカルト 現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ/森達也角川書店

一番好きなものって、けっこう世間的にはB級の評価だったり、声高に人に自慢するのをためらうもの、なんてことはよくあって、実際、自己紹介やインタビューなんかでは一番好きな、最も影響を受けたものには触れず、当たり障りの無い音楽や小説を紹介するなんてこともままある。あるいは、好きすぎて自分だけのものにしておきたい、他人に取られたくない、なんて心理が働いているのかもしれないし、もしかするとすでに内面化、血肉化してしまったせいで、それを他人に批判されると自分自身を否定されるようで…、なんてこともあるかもしれない。
まあ基本、お茶を濁す
ところが森達也は、その魅了される「もの」について、しっかり他人にも宣言してきた希有な人だと思う。
それは例えば「小人プロレス」だったり、「超能力者」だったり、「オウム真理教」だったり、「食肉加工業」だったり。実際存在しているのだけれども、タブーや自主規制、暗黙の了解なんかによって不可視の存在になり、彼岸と此岸をたゆたっているもの。ちょっと胡散臭くて近寄りすぎるとただじゃ済まなそうな怪しいもの。それは「観察者たちに媚びるかのように振る舞い」「まるで性悪女のよう」に「翻弄する」オカルトなもの。