湯の里ひじおり


ドキュメンタリー映画「湯の里ひじおり」
映画のプロットとしては過疎の為に小学校が閉校になるまでのドキュメンタリーで最後涙を誘う単純(ちょっとあざとい)なのだけど、その村人の日々の営みの中に息づく神話や伝統の豊かさが、この映画をある種崇高なものにしている感じ。
大江健三郎の小説は生地の山奥の小さな盆地の豊穣な神話世界が土台というか基底部にあって、それが物語を色鮮やかにしているのだけれど、ここ、肘折もその地形がよく似ている。で、小説では村人が死んだら螺旋を描きながら盆地を上昇し、最後、自分の木に降り立つ、みたいな感じだったと思うけど、そこも同じく、霊は最後木に戻るというような神話が残されている。なんだか小説の実写版みたい。
神話、伝説のようなものは案外どこも似ているのかもしれないな、と思うのは、同時期に見た石川直紀氏の展示、東北の祭りのナマハゲなんかが、沖縄、奄美大島のシャーマンの姿形と良く似ている。そういえばブライアンジョーンズがモロッコで録った「ジャジューカ」のジャケット写真もこんな姿形をしていた。
その土地に根ざした発言、発信は、ある意味故郷を出て東京へ出て来た自分としては嬉しい反面、後ろめたい感じもしないではない。