マンドラゴラ叫び


まめさんは、家にたまにお客さんがくると、押し入れに潜り込み布団の陰から、「う〜〜」とか「は〜〜」とか威嚇、自身が今不愉快であることを全面的に表明する。けれど、まあ、そんなに怖くない、というか可愛かったりする。
で、自然、自分はそんな微温的な怒りに慣れていた。
アトリエ近くで子猫が生まれ、これはまずいねと仲間と議論を重ね、母猫の避妊手術もろもろしようではないかという結論に達した。そして肝心の母猫を部屋に閉じ込めた、その時、ものすごい形相で呪詛の言葉を撒き散らしながら部屋中のものをひっくりかえしていく。
正直、怯んだ。怖いと思った。まったく野良の純粋な怒り、生の憤り、剥き出しの憎悪をなめていた。そして、自分は怯懦し、戸を開け逃がしてしまった…。