ときどき思い出す


それこそ17,8年前、自分が大学の1年生頃、授業の講評会で、それぞれが自作のオブジェや絵画をプレゼンテーションするなか、ひとり、肩に糸くずをのせて、これが私の作品ですと言った、そのコンセプト、語られた言葉、続くディスカッションは忘れたけれども、その凛とした佇まいがとても印象に残っていて、他の学生を圧倒する、もう一人前の作家のような。けれど、しばらくしてその人は退学したのを聞いた。
そういうずっと、まなうらにこびりついたように残っている独特な人って他にも数人かいて、自分の意志とは関わり無く早く大人になってしまったような感じ、同世代の中で少し浮いているというか、どことなく単独で孤独に耐えているような、居心地悪そうに、それでも作品をつくることでその穴埋めをしようとしているみたいな。
ところがそういう才能のある(と自分から見ればおもえる)人達が、その後、美術シーンで活躍しているのをあんまり見聞きしない。別に話題豊富に露出するのがアーティストの正しい在り方、制作を続けることが善であるとは毛頭思わないけど、きっと素晴らしい作家になるだろうとこっちは勝手に思っていたのでときどきふと思い出す。そして、いつか、素晴らしい作品と一緒に自分たちの前に現れてくるんだろうかなともときどき勝手にふと思ったりする。