酔宵


視界は、両手を軽く結んで目の前にあてた望遠鏡状態ほどに狭まり、時折、膝がカクっとなる。バス停でバスをずっと待っていたが、終バスはとうに過ぎていたことに気付く。大きく溜息をついて、そこから家までヨチヨチ歩く。歩くのがだんだん億劫になってこのまま道端で眠ろうかなという気持ちが押し寄せてくるが、試しに両手をブンブン前後に大業に振ると自然に足が出てまっすぐ前に進む。深夜のウォーキングをしている健康志向な人に見えるだろうかと思い、それなら「シューッ、シューッ」と口をすぼめて息を吸って吐いて、呼吸法から実践しているプロっぽく振る舞う。