明滅、義憤、遺失


有楽町で「ブレードランナー2049」を見る。通路側の席をとるが、その通路を挟んだ隣の席の女性がしばらくしてから組んだ足を投げ出し、前後に揺らしはじめる。三三七拍子のような規則的なテンポで化繊のズボン(スカート?)の擦れる音、またそれによって足元の避難誘導ライトの明滅するのが視界に入り気が散ってしょうがない。エヘンと咳払いをしたい、いや、もっとダイレクトに顔を近づけ唇に人差し指を押し当て「シー!」って言いたい。いっそ別の席に移動するかとか思ったけど隣で夢中で見ている妻に無言で姿を消すのもそれはそれで心配するだろうかとか思い悩むうち貧乏ゆすりはおさまる。ああ助かったと画面に戻るがふと気付くとまたいつの間にか始まっている。このバカモン!と心の中で罵倒し、もう頬杖をついて手のひらで目元に傘をつくり遮断するつもりが、肘掛に置いていたマイ水筒の蓋を肘で落としてしまい、それは通路の坂をコロコロと綺麗に転がりあっという間に闇に消えていく。