台湾4(自分探しの旅・台北)


とりあえず、台北駅から地下鉄に乗って士林へ行き、そこからバスで「故宮博物院」へ行く。

観光客が多くいのでバスも分かりやすく拍子抜けするほどすんなりたどり着く。

故宮では台湾漫画作家の鄭問の展示「2018鄭問故宮大展: 千年一問」も開催している。知らなかったが1990年代に漫画雑誌「モーニング」で『東周英雄伝』の連載を開始し日本デビュー、以降『MAGICAL SUPER ASIA 深く美しきアジア』などの作品を発表し人気を博した漫画作家だそう。故宮で漫画家が展示するのは初めてのことだそうで、台湾の国民作家、日本でいう手塚治的な巨匠なのだそう。マーブリング、スパッタリング、スタンピング、砂をつける、燃やす等、あらゆるテクニックを使って地をつくりその上に人物を克明に描写していく。美術予備校の芸大コースを思い出す。原画よりも印刷されたものの方が色彩・マチエールが美しいなと思った。筆を用いた線が画力の確かさを裏付けている。




博物院の方は前回見たから適当でいいかな、とか思ったけど、見るととても美しく結構楽しく過ごす。
バスに乗って士林へ戻り、小腹が空いたので勇気を出して店に入る。

適当に指差して待っていると海鮮粥が出てくる。まだ明るい時間、外行く人々を眺めながら熱い粥をフーフーして食べる。何より、店に入れて注文出来たことが嬉しい。

士林は夜市の準備で忙しそうに立ち働いている。町自体がこれから始まる饗宴に向けて空ぶかしをしている。噴火する直前のマグマ溜まりのようなエネルギーの凝縮した感じ。一人で電車・バスに乗れたこと、食事も出来たことから気が大きくなり、いっちょ夜市が始まるまで待って冷やかしてみるかとか思っていると、すぐ目の前でスクーター同士の事故を目撃してしまう。途端、のぼせ上がった自意識に冷水を浴びせられ、急に怖くなって暗くならないうちにホテルへ帰る。ホテルで台湾ビールを飲んで一休みしたのち、近くの路地の突き当たりのワンタン麺屋さんに入る。

今までYさんに連れて行ってもらったお店は人気店、家族友人らが談笑しながら食べる騒がしい店ばかりだったが、ここは、皆、ひとり俯いて静かに食べている。同じ席に座っている親父は面白くなさそうに新聞を読み、それから携帯をいじくりまわしはじめる。しばらくすると店先に出ていた女将さんが何か話しかけ、うっとおしそうに返事したら、ばしばし叩き始める。ああ、目の前の親父は客じゃなくてこの店の亭主だったのか、と思う。路地には上半身裸で刺青をした男性が闊歩している。