ダブリン紀行7
帰途へ。行きも長かったけど帰りも長くて、なんだかもう尻が痛くなりうまく眠れない。
無事成田に着いて、疲れた疲れたって歩いていると財布が無いことに気がつく。で、やべ〜って走って戻っていたら係りの人に止められて、逆走というか一度出た飛行機には戻れない決まりだそうで、そのおじさんが代わりに探しにいってくれる。で、座席番号を教えて、イリイリして待っていると、おじさん戻って来て座席の下に落ちていたと渡してくれる。尻の具合が落ち着かなく、座席でもぞもぞ体勢を変えている間に落下したみたい。安心して泥のように疲れる。失神しそうだった。
ダブリン紀行6
午前中、ヒューレーン市立美術館へ再び行く。ギャラリー内には椅子が並べられて、お昼から無料ピアノコンサートがあるらしく、次々にお客さんが集まって来ている。これも日本ではあまり見かけない光景だと思う。感心していると、Taylor Galleriesで一緒に展示したヨハネスアイト氏と奥さんに偶然出会う。「いやぁ狭いですねぇ」なんて言う。
街に戻り、ブラブラ歩いているとクラクションを鳴らされる。道路の端に避けても再び鳴らされるので、なんだ怖い怖いと振り返ると、一緒に展示したデビッドクイン氏と助手席に柳沢さんで、「いやぁ狭いですねぇ」なんて言う。
車に乗せてもらい、デビットクイン氏の作品が設置してあるホテルを見せてもらう。
フロント。
エントランスの柱。
それからリチャードゴーマン氏のアトリエへ向かう。だいぶ離れた郊外の別荘地のようなところ。「SHIOSAI(潮騒)」と表札がかかっている。端的にお城。
お洒落アトリエ
かわいいファイル。
ちょっと以外だったのが油絵の具を使っているにもかかわらず筆が硬い豚毛ではなく、なんか柔らかい筆ばかりだったこと。ちょっとヌルッとした表面はこういう筆で出すのかとへーって思った。
外には露天風呂!
帰りは電車で市内に戻る。
柳沢さんと最後の一杯していきますか、なんてなってパブに行く。
教えてもらって知ったのだけど、このハーペ二ー橋はポール・オースターの映画『ルル・オン・ザ・ブリッジ』の舞台だったところ。
the stag's headへの道標。
店内に鹿の剥製がある。
ダブリン紀行5
街を歩く。ジョイスが歩いたんだろうな、なんて想像しながらただ闇雲に歩く。
クライスト・チャーチ大聖堂。
美しいタイル模様。行きの飛行機で「ダヴィンチコード」を見たので、なんとなく掘り返すと秘密の部屋や暗号になっていそうな気がする。
ネコとネズミのミイラ。
隣のダブリニアに行く。マネキンでアイランド史を再現されている。とても良い。
トイレ
晒し。
黒死病。
So Galleryの入っているPowers Court。重厚な建物。
中は吹き抜けでフードコートのような感じになっている。ブティックや宝石店などが入っている。
机の下に作品梱包用のクラフト紙のロールがセットされてあり、便利そうで良いなと思った。ギャラリーのオーナーに、「あなたの梱包はパーフェクトだったわよ!」とえらく褒められる。こっちは日本ほどガムテープの種類がなく、薄手のビニールテープのみらしい。
この彫刻がすごく良いと思った。
オープニングパーティ。
Taylor Galleries で作品を買ってくれた写真家の方がまた来てくださり、ポートレイトを撮ってもらう。
フードコートでレセプションパーティ。シチューっていうのがアイルランドの典型的料理なのだろうか。
ジョングラハム氏とバロウズやケルアックのビート二クスや、レイモンドカーバーの話をする。自作についてやアートを語るのは難しいけれど、好きな小説家は英語が喋れなくてもなんか通じる気がする。
二次会へ。最初に柳沢さん達と行ったパブに行く。有名店なんだな。
しかしこう飲み会続きで連日顔を合わせているにもかかわらず、よくまあみんなよく喋るなぁと感心する。話題が尽きないのだろうか。
ひとまずこれで二つの展覧会は無事に始まりオープニングパーティーの大仕事は終了。
ダブリン紀行4
ジョニージョンストン号前の大飢餓モニュメントを見る。彫刻は皆悲痛な表情をしていている。
ダブリン城、チェスター・ビューティー・ライブラリーに行く。
園内では桜(?)が散り始めている。
桜が散っていたけどアイルランドではこの時期に咲くの?って聞いてみたけど、英語力不足で何言っているかまったく分からない。多分、珍しいと言ったと勝手に解釈する。というのも、来るまでアイルランドは寒い、寒いと聞いていたけど思っていたほど寒くないから。温暖化の影響なのかもしれない。
国立自然博物館へ行く。ここも無料。
ちょうど馬の作品をつくったところだったので高揚する。
こういう隙間を埋めるようにビッシリ展示するのは日本ではあんまりないと思う。
トリニティカレッジのダグラスハイドギャラリーへ行く。ちょうど初日だったみたいでお客さんも多い。学生スタッフ(?)が親切に説明してくれるが英語が分からずいたたまれず、学内のカフェに逃げるように行く。
柳沢さんと落ち合い、バスに乗って郊外のジョン・グラハム氏のお宅へ訪問する。閑静な住宅街で映画のような街並み。
超おしゃれ家。
氏の作品が掛かっていて高級レストランのよう。
暖炉に火なんか入れてくれて、ジャズのレコードがかかって、その前のソファーで食前酒とかいただく。何か向こうの人はホスト慣れしているというか佇まいそのいちいちに隙がない。
本棚に自分の好きな村上春樹やオースター、カズオイシグロの小説があって嬉しくなってそれについて話すがうまく話せない…。
ワンちゃん。全然吠えもせず、くんくん匂いを嗅いでスリスリしてくる。猫みたい。聞けば、まだ一回しか吠えたことがないらしいが、そんなことあるのだろうか?
奥様がつくってくれた野菜シチュー。正直、ここでの食事が一番美味しかった。野菜を体が欲していたというか、染み入るような優しさにあふれていて。白ビールも細胞が喜ぶ美味さだった。
ダブリン紀行3
ヒューレイン市立美術館へ行く。バスはよく分からないので歩いて行くがそれほどの距離でもない。美術館は昨日の国立美術館より現代美術より、充実していてうっとりする。
フランシス・ベーコン・ルーム。格好良い。しびれる。
ベーコンのカオスのアトリエ。天井まで絵の具が飛び散ってて一体彼の頭のなかは何が吹き荒れていたのだろう?
他にはフィリップ・ガストンがありとても嬉しくなる。ここも無料。
中心街に降りて行って市電に乗り現代美術館へ向かう。途中、ギネスビール工場がありその大きさに圧倒される。
美術館は企画展と常設展があり、企画展はお金がかかる。日本の若い作家も入っており、偉いなぁと感心する。
映像作家のデレク・ジャーマンの展示をしていて、自分は恥ずかしながら知らなかったあけれどコアなファンの多い有名な作家だそう。彼は絵画を多く描いていてそれがとても美しくドキドキする。ちょっとデビット・リンチを彷彿とさせる「デロリ感」があるというか。時代によってスタイルは大きく変遷させていくのだけど根底には「愛」があってそれが肩を抱いてくれるような安心感があるというか。残念ながら画集は売っていなかった。
ここで三たび伸さんに会う。中庭でコーヒーを飲みながらタバコを吸いまったりする。美術館は元病院だったらしい。サナトリウムとか刑務所を想起させる不穏な要塞建築。一角にはレジデンス施設もあって若い作家がせっせと制作もしていた。
シャイニイングのような豪奢な庭園を一緒にまわる。急に風が冷たくなり寒くなる。モデルが震えながら撮影会をしている。
電車に乗って市街地に戻る。Taylor galleriesのオープニングにはまだ時間があったのでお互いホテルに戻って少し休んでからにしようとする。別れ際、「君、そのヒゲやばいよ」と言われたのでスーパーで髭剃りを買ってホテルで剃る。
ギャラリーは荘厳で展示構成も美しく、見事というほかない。他の作家にくらべて自分の作品の薄っぺらさに悄然となる。
広沢仁ドローイング。
2階へ続く。
ため息が出るほど美しい。嫌味にならないというかいやらしくないというか。
オープニングの料理。
オーガナイズしてくれたリチャード・ゴーマン氏の挨拶。知らなかったけれどもダブリンではスター。道を歩けばいろんな人が話しかけてくる。皆に愛され、また皆を愛している。「ジンヒロサワ・イズ・ア・ピス・ボーイ(小便小僧)」と紹介される。
パーティーは盛況。脂汗を垂らしながら喋れない英語をがんばる。思いがけずいくつか作品が売れる。
二次会は近くのホテルのパブ。ギネス祭り。
みんなツマミもなしで飲むこと飲むこと。オランダからドイツから柳沢さんに会いに作家が集まり感動的な会だった。しかし、自分も人のこと言えないけど禿頭が多いな。
ダブリン紀行2
ホテルで朝食を食う。脂っこいウィンナーと塩辛い厚いベーコン、スクランブルエッグとモサモサしたパン。野菜が欲しいがオレンジジュースでカバーする。
中庭があり皆そこで喫煙している。宿泊客は目が合うと必ず「グッモーニング!」と微笑みかけてくれる。
とりあえずトリニティカレッジの「オールドライブラリー」に行く。観光客が多い。行きの飛行機では「ダヴィンチ・コード」を観たので、「ケルズの書」など何か別の隠されたメッセージがあるのだろうかとか思ったりする。そこで偶然今回一緒に展示する渡辺伸さんに出会う。嬉しい。彼はツアーで来ているので軽く話したあと早々と別のところへ皆と移動する。寂しい。
ハープは欲しいなと思った。
大学内を横断し、「アイルランド国立美術館」へ行く。無料。そこでまた伸さんに出会う。今度はちょっと照れくさい。観光ルートの通りに自分は進んでいる。
「国立図書館」に行く。無料。ちょうどWBイェーツの展示をしていたのでゆっくり見る。イェーツのゆかりの地スライゴーを訪れるのも今回の目的だったのだが充実した展示だったのでもうこれでいいやと満足する。先の美術館で初めて知ったのだがイェーツは芸術一家で父親、兄弟、姉妹、娘は皆画家で、特に弟のジャック・B・イェーツの表現主義風な作品群は非常に気に入った。父ジョン・バトラー・イエーツ(1839〜1922)画家。長男ウィリアム・バトラー・イェーツ(1865〜1939)詩人。長女スーザン・マリー(リリー)・イェーツ(1866〜1949)、次女エリザベス・コルベット(ロリー)・イェーツ(1868〜1940)次男ジャック・バトラー・イェーツ(1871〜1957)、WBの娘アン・イェーツ(1919〜2001)
「国立考古学博物館」に行く。無料。アイルランドの遺跡などを見る。湿地帯で発見されたミイラが何ともグロくて秀逸。
トリニティカレッジのギャラリーで柳沢夫妻と伸さんと待ち合わせパブに行く。ここは有名なお店らしい。注ぎ方によって大きく味が変わるらしくサーバーからゆっくり何度も分け時間をかけて注いでいる。昨日の店とは大きく店員も客層も異なる。
入り口のライトは壁から生えた腕が力強くかかげている。
イタリアンに行ってワインを飲む。伸さんは酔っ払って(?)店員に「ユー、ノウ? テイラーギャラリー? トゥモローオープニング!ウィーアーアーティスト!」と話しかける。自分も大概英語が喋れないので鬱鬱としているのだが、伸さんは喋れなくても朗々と喋りかける。ちょっと感動する。
ダブリンで一番美味しいイタリアンだそう。
このあと路上でタバコを吸っていたら、女学生(?)がタバコをくれとたかってくる。伸さんはここでも「ユー、ノウ? テイラーギャラリー? トゥモローオープニング!ウィーアーアーティスト!」と。もうとにかく凄い人である。